ラグビーワールドカップ2019観戦記

ラグビーワールドカップ2019の観戦記をまとめました。

日本代表の前評判について

前回大会で優勝候補の南アフリカを破り、プール戦で3勝を挙げた日本代表。日本開催というホームアドバンテージも含めて楽観的な予想をたてるマスコミもあるが、ワールドカップで1勝を上げる難しさは全く変わらない。前回大会はマグレだったのか。それとも実力なのか。本当の強豪の仲間入りを果たす上でも重要な大会となった。

大会直前におこなわれた9月のテストマッチでは南アフリカに完敗しており、ファンの頭の中には不安がよぎった。はたして日本大会は成功するのか…。不安と期待が入り混じった中、大会は始まった。

日本対ロシア

大会開幕戦であり日本の初戦はロシア。世界ランキングでは格下のロシアだが、試合データも少なく謎に包まれており、ミステリアスな存在だった。しかし、絶対に勝たなくてはいけない相手であり、ボーナスポイントも求められる試合だった。

試合開始直後、まさかのキャッチミスから先制トライを許す。日本にとって最悪のスタートとなってしまった。ミスを取り戻そうと焦ってしまい、いつもならミスが出ないところでミスが相次ぐ。明らかに選手の動きが固く、本来の力が出ていない。ロシアも日本代表を研究してきており、前半を12-7と5点差のリードで折り返す。

地元開催という重圧が逆にプレッシャーになってしまったが、後半に入りようやく日本らしさが出てくる。松島のトライで落ち着きを取り戻した日本は順調にトライを重ねて、終わってみれば30-10と本来の実力通りの結果になった。 

日本 30ー10 ロシア

日本対アイルランド

第2戦は優勝候補の一角アイルランド。直前の世界ランキングは2位に浮上しており、史上最強との呼び声高い。激戦の地は静岡。専門家やマスコミは3勝1敗のプール2位通過が現実的な目標として、アイルランド戦は敗戦濃厚と予想する人が大半だった。誰も勝つとは思っていない中で、日本代表だけが勝つことを疑わなかった。

試合序盤からトライを奪われる展開に。しかし、試合の主導権は渡さず、トライを奪われても、田村のキックで追いすがる。後半はアイルランドの攻撃を無得点に抑えると、ついに福岡堅樹が一瞬の加速でトライ!終盤にはまたしても福岡がインターセプトから激走!ラスト5分から時計の針が止まったかのように進まない中、歓喜の瞬間が訪れた。

日本 19-12 アイルランド

日本対サモア

第三戦は南国の雄サモア。勝てば初の決勝トーナメント進出に大きく近づく一戦。相手の圧力にやや屈する場面もありながら、終始落ち着いた日本が勝ち点5を獲得する。これによりスコットランドはただ勝つだけでなく4トライ以上挙げての勝利で勝ち点5を獲得しないと決勝トーナメント進出が厳しくなった。

日本 38-19 サモア

日本対スコットランド

プール戦最後は因縁の相手スコットランド。前回大会唯一の黒星と報道されているが、そもそも対戦成績は1勝9敗(テストマッチは0勝7敗)。名将・宿澤広朗監督が率いた1989年の勝利以降、30年間1回も勝てていないスコットランドについに勝つ日がくるのか。スコットランドはワールドカップでティア2の国から負けた事がないというありがたくない記録さえ持っている。全国で大きな被害をもたらした台風によって試合中止が危ぶまれたが、多方面の尽力によって開催にこぎつけた。

イギリスのアン王女が見守る中、横浜で試合は開始される。スコットランドは日本にボーナスポイントを与えず完璧に勝たなければプール戦突破できないため、前半から積極的に仕掛けてくる。できれば日本をノートライに抑え、前半2トライ、後半2トライの大差で勝ちたかっただろうが、日本の松島と稲垣のトライが許さなかった。

すでに前半終了時点でスコットランドのゲームプランは崩壊。しかし、伝統のアザミのエンブレムは諦めない。後半は崖っぷちに追い込まれた伝統国スコットランドがプライドを捨ててアタックを繰り返す。そこから一進一退の攻防が続く。今まで見たことがないスコットランドの必死さが伝わる。刻一刻と終了が近づく中、ラフプレーを選択するほどスコットランドは追い詰められていた。伝統国のプライドを正面から受け止め、勝利をつかみ取った日本代表に誇りを感じる試合だった。

日本 28-21 スコットランド

日本対南アフリカ

準々決勝は因縁の相手・南アフリカ。日本はノートライに封じ込まれ、いいところなしで終わる。本来の実力差通りの試合運びで、完敗と言わざるを得ない。優勝を目指す南アフリカと、予選突破を目指す日本の準備の違いなのか。要所要所で確実に点を重ねる盤石の試合運びだった。結果的に日本は優勝国に負けることになる。

日本 3-26 南アフリカ

決勝戦 南アフリカ対イングランド

前日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ率いるイングランドと、日本を破って勢いを増す南アフリカの試合。イングランドは世界最強国ニュージーランドを勝ち破ってきた。日本人からすればどちらのチームを応援してもいい状況。どちらも日本とは浅からぬ因縁があるので、最後まで楽しめた。スプリングボクスが3度目の優勝を飾り、大会は幕を閉じた。

南アフリカ 32-12 イングランド

まとめ

世界に通用したと確信したロシア戦

歓喜のアイルランド戦

撃破のサモア戦

悲願のスコットランド戦

日本に熱狂をもたらした大会は終了した。大会期間中は飲食物持ち込み禁止など話題も豊富にあり、連日ニュースを賑わせた。大会前の不安は杞憂に終わり、日本中が応援ムードに沸き立った。

アジア初開催となった今回のワールドカップで、大袈裟に言えば日本はようやくラグビーの楽しさを知った。海外から訪れるファンの楽しみ方を見て、ワールドカップの楽しみ方を教えられたのだ。

高校野球を応援する観客や応援団を見れば球児の実力がわかるように、ワールドカップの楽しみ方を知れば、その国の代表の実力がわかる気がする。日本代表の実力だけでなく、ファンもティア1相当にならなければいけないと感じた。

2019年新語・流行語大賞にはワンチーム、ジャッカル、笑わない男、にわかファン、4年に⼀度じゃない。⼀⽣に⼀度だ。がノミネート。4年後、どのような成長を見せてくれて、また熱狂が訪れることを期待したい。