帝京大学ラグビー部が8連覇を達成するまでの旅路

帝京大学ラグビー部が前人未踏の大学選手権8連覇を達成しました。なぜ8連覇が達成できたのか。それまでの道のりはどうだったのかまとめました。

帝京大学ラグビー部とは

1970年に創部され、1978年に関東大学ラグビー対抗戦グループに正式に加盟。1996年に現在も監督を務めている岩出雅之が就任。1911年創部の同志社大学、1918年創部の早稲田大学、1922年創部の明治大学と比べると後発のラグビー部です。

2002年度の大学選手権で初の準決勝進出。2007年度の大学選手権ベスト4を記録して以降は常に安定した成績を残すようになる。2008年度に6勝1分の成績で悲願の関東大学対抗戦初優勝。2009年度は関東大学対抗戦を4位ながらも東海大学に勝利し創部以来40年目にして大学日本一を達成。チームスローガンはENJOY&TEAM WORK

帝京大学の特徴・特色・強み

負けない作法

負けない作法

 

2011年度の3連覇までは堀江翔太(2007年度主将)らに加えLOティモシー・ボンドや、FLヘンドリック・ツイら巨漢留学生を含めた重量FWが魅力でした。スクラムやラインアウトで優位に立つゲームプランが中心。

3連覇以降はBK陣にもタレントが揃い、中村亮土、竹田宜純、森谷圭介、重一生、松田力也など各年代にU20日本代表経験者が勢ぞろい。FW・BK共に強いバランスの取れたチームに進化しました。

帝京大学の真骨頂は攻撃ではなくディフェンスにあります。大学王者で個人スキルが高いと自己中心的な選手が増えそうですが、誰もさぼらないで懸命に走りディフェンスをすることを評価したいです。

集中力が途切れることなくタックルを継続できているため、ペナルティによる自滅がない。FW戦で優位に試合運びをするため攻撃陣に目がいきがちですが、ディフェンスも一級品。よく言われる「自分たちのラグビー」が出来ていることのはディフェンスが出来ているのが前提の上で成り立っています。

過去の戦績

年度 対抗戦 対抗戦順位 主将 大学選手権の成績 対戦相手
2008 6勝1分 1位 吉澤尊 準優勝 10-20 早稲田大学
2009 5勝2敗 4位 野口真寛 優勝 14-13 東海大学
2010 4勝3敗 4位 吉田光治郎 優勝 17-12 早稲田大学
2011 7勝0敗 1位 森田佳寿 優勝 15-12 天理大学
2012 6勝1敗 1位 泉敬 優勝 39-22 筑波大学
2013 7勝0敗 1位 中村亮土 優勝 41-34 早稲田大学
2014 7勝0敗 1位 流大 優勝 50-7 筑波大学
2015 6勝1敗 1位 坂手淳史 優勝 27-17 東海大学
2016 7勝0敗 1位 亀井亮依 優勝 33-26 東海大学
※2012年度は筑波大学・明治大学と同率1位
※2015年度は明治大学と同率1位

過去の大学選手権の成績

帝京大学の8連覇という記録は圧倒的です。同志社大学が3連覇した以外は明治も早稲田も2連覇止まり。しかしながら2009年度は1点差、2010年度は5点差、2011年度は3点差と薄氷の勝利でした。それでも8連覇を達成できたのは運を味方につけたか、ワンプレーにこだわった結果か。

2009年度はどちらも初優勝を目指す東海大学との決勝。東海大学は三上正貴、木津武士、マイケル・リーチ(2015年W杯メンバー)や、豊島翔平(7人制日本代表)など後の日本代表を多数擁する。前半7-7と互角の勝負を繰り広げる。東海大学トライ数2、帝京大学トライ数1とトライ数で負けながらも1点差の激戦を勝利して初優勝。

2010年度は名門早稲田大学との決勝。有田隆平、山中亮平、中鶴隆彰など擁する早稲田。ツイ、ボンドを中心にラインアウト、スクラムで有利に立つ帝京。早大は後半終了間際に中濱がトライを決めて5点差まで詰め寄ったが 、あと一歩及ばず。帝京がロースコアゲームの接戦を制する。

2011年度は創部史上最強の天理大学と決勝。現日本代表である立川理道擁する天理大学と激突。創部史上初の大学日本一を目指す天理大学は帝京得意のスクラム勝負を避けて、バイフ、ハベアの留学生CTB陣が得意のランで勝負する。両者引き分けかと思われた最後に森田佳寿のDGで劇的勝利。

2012年度は国立大学初の優勝を目指す筑波大学と決勝。内田啓介や福岡堅樹擁する創部史上最強の筑波大学は対抗戦で帝京大学から勝利している相手。しかし大学選手権での帝京はディフェンスが機能しているため、筑波の速いパス回しの展開を封じる。最終的に39-22で撃破。

この頃から大学の中では頭一つ抜けた印象があり、3連覇以降は王者の貫禄で試合運びが目立つようになった。大学選手権の決勝でも大差で勝つようになり、次のターゲットはトップリーグになっていきます。

日本選手権の成績

年度 大会 対戦相手
2008 第46回大会 リコーブラックラムズ 25-25
2009 第47回大会 NECグリーンロケッツ 5-38
2010 第48回大会 東芝ブレイブルーパス 10-43
2011 第49回大会 東芝ブレイブルーパス 19-86
2012 第50回大会 パナソニックワイルドナイツ 21-54
2013 第51回大会 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 13-38
2014 第52回大会 NECグリーンロケッツ 31-25
2014 第52回大会 東芝ブレイブルーパス 24-38
2015 第53回大会 パナソニックワイルドナイツ 15-49 
2016 第54回大会 サントリーサンゴリアス 29-54

※2008年度はトライ数の差によりリコーブラックラムズが2回戦進出

V3までは、大学選手権に勝つことだけで精一杯だったが、大学を勝ち抜き、日本選手権の舞台でトップリーグ勢に挑む間に、ここでも戦えるのではないかと思えてきた。V4の年からは、大学選手権が終わってからではなく、シーズンの初めからトップリーグ勢に勝つことを目標に据えて1年を過ごした。

引用:大学枠撤廃から3日後の大激戦。ラグビー日本選手権、帝京の意地。

2013年度の日本選手権で「来年からは、ここで勝てるチーム作りを目指す」と岩出監督が宣言して以降、春シーズンからトップリーグ勢との試合や練習試合を積極的に組み、目標を打倒トップリーグに設定。

そして2014年度大会の1回戦でトップリーグ10位のNECを31-25で破る大金星を飾る。試合内容はシーソーゲームで互角の勝負。帝京は各個人が自分の役割を完璧に全うし、ノーサイド5分前に8点差と勝つべくして勝った試合だった。大学生がトップリーグを破るのは2005年度に早稲田大学がトヨタ自動車に勝って以来9年ぶりの勝利。

2017年度日本選手権の大学枠撤廃

2017年度日本選手権から大学枠が撤廃されます。スーパーラグビーに参戦したことでサンウルブズに選ばれている選手には休養してもらうため国内リーグを早期に終了させる必要がでたことや、大学生と社会人の実力がかけ離れ過ぎていることが理由です。実際に大学では無敗を誇る帝京大学も日本選手権では2014年度にNECに一度勝っただけです。

しかし育成・若手強化という意味では一定の役割がありました。トップリーグに挑戦する機会が減るため、帝京大学が井の中の蛙になってしまうことを一番恐れる。成長期に高いレベルを経験しないのは日本代表の弱体化にも繋がっていくからだ。

ワラビーズ(オーストラリア代表)に18歳で選ばれているジェームズ・オコナーなど20歳前後で代表デビューする選手も少なくない。一番の伸び盛りである18歳から22歳までの期間で、協会はどのような若手強化策をとるのか真剣に考えなければいけない。

まとめ

帝京大学はモチベーションを落とすことなく、前人未踏の大学選手権10連覇に頑張ってほしい。