昨日から今朝にかけて雨が降っていた空も、午前中は小雨になりパラパラと振る程度になっていた。気温は高くなくても湿度は異常に高く、私は着ていた黒いシャツを汗でビショビショにしながら霞が関駅を降りた。そう、私は人生で初めて東京地方裁判所に行き、民事裁判を傍聴してきたのだった。
参加までの経緯
今回、ネット界隈の有名人H女史が原告の誹謗中傷の口頭弁論を傍聴してきました。前々から裁判の傍聴は一度は経験してみたいと考えていましたが、いざとなったら一人は不安だし、持ち前の怠惰な性格が邪魔をし「めんどくさい…家で寝てたい…」となってしまい、令和の今日まで先送りになっていました。
今回参加した理由として①本業が暇すぎた②原告側を知っている③被告側もユニークな経歴の人物④似たような事案を私も経験済み⑤被告側がネットで積極的に自分の裁判をネタにしており、ご丁寧に裁判所の裁判フロアまで告知していた。以上の理由から、参加することに至りました。私は30後半になってようやく傍聴童貞を捨てることになったのだ。
霞が関に向かった
遅れて参加できなかったら最悪(途中参加できることを後になって知る)だと思い、20分前には到着しました。時間が余っていたので当日の裁判を専用の機械で調べたら結構な裁判数があり、有名な会社名もチラホラ。その中でも覚醒剤の言葉はインパクトがあったが、結構な数の覚醒剤の裁判がありました。。
世の中には裁判ウォッチャー(傍聴マニア)なる人がいるらしいので、当日までに「席とれなかったらどうしよう…」と不安に思ってましたが、平日の昼間だったことが災いして参加者は私含めて二人だけでした。もう一人は20代らしき若い女性。一瞬「もしやH女史(原告)か?」と思ったが違った。
ただコロナウイルスの影響のせいで、傍聴席も間隔を空けなければいけないので多くても10名ぐらいしか座れませんでした。少し注目度があった場合はスグに席がなくなりそうなので、かなり早めに行って裁判フロアの待合室で待機して準備していたほうが安全かと思います。
裁判がはじまった
原告(訴えた側)は弁護士を代理人としていましたが、被告(訴えられた側)は弁護士をたてずに個人で自己弁護(いわゆる本人訴訟)していました。おぉすげえと思ったのも束の間、やはり素人。傍から見ていても拙さが伝わってきました。
簡単に言うと「証拠書類が不十分」となったが、被告も「なにを準備すればいいの?」状態だったし、私も聞きながら「どうすればいいの?」と思った。裁判官も中立の立場なので「それは自分で考えろ」しか言わなかった。裁判で素人が自己弁護するのは無理ゲーだなと思いました。
例えば裁判官は「書類のタイトルは準備書面にして」と伝え、被告は「え?そうなんですか?わかりました」という一幕があった。裁判官は「基本的なことぐらい守ってくれよ」感を出していたが、私は「だったらテンプレート渡してやれよ」と思った。裁判は初心者に優しくない。
専門知識がない素人にはスタートラインである「ちゃんとした証拠書類」すら揃えることが難しいことがよくわかった。被告が正しい場合でも証拠書類を揃えられずに敗訴になっちゃいそう。一方でたかだか10万円の訴訟で弁護士を雇うのも個人の金銭的負担が大きい。訴えたもん勝ちと言われる部分を理解できました。
例えばですが「自分が〇時〇分に〇〇にいたことを証明せよ」と言われても難しい場合が多いのではないでしょうか?今日の裁判はそんな裁判でした。
裁判は大きな見せ場もなく、淡々と進み、呆気なく終わった。
裁判終了後に被告側に声をかけて、話を聞かせてもらった。被告側は当初は「いい経験ができそうだ」と非常にポジティブに捉えていたが、予想以上に裁判は面倒だったことには苦笑していた。「証拠書類を集めるための承認を得るために明日も裁判所に来ないといけない」と語る顔は疲れていた。
裁判所へ提出する書面(主張書面および証拠)を集めるのがすごい面倒だと愚痴っていたし、自分自身で「裁判ヤル気なさすぎてヤバい」と自嘲していた。
「15分で終わるなら自宅からウェブ会議でよくね?」とも言っていた。確かにわざわざ15分のために霞が関に来るのはツラい。サラリーマンなら絶対に無理。被告の方には突然の質問に快く答えてくれたことに感謝し、弁護士の有難みを痛感した。
ちなみに自身を訴えてきた原告のことは「自己顕示欲の塊」としっかり嫌っていました(笑)
まとめ
今回はネット上の悪口が誹謗中傷とした裁判であり、被告側も反論する立場をとっていましたが、15分程度で終わりました(5分は次回のスケジュール調整)。私としては「こんなに早く終わるんだ…」と思いつつも「裁判てこんな感じなのか」を知れただけでも良い収穫でした。
今回の口頭弁論は証拠書類を揃えられたかどうか、いつまでに揃えられるかどうかの話だけだったので裁判と言う仕組みを理解できた意味では勉強になったが、面白かったかどうかで言うと面白くはなかった。もしも傍聴に興味があるなら、一番裁判らしさを体験できる初公判か判決の時に参加することをおススメする。
傍聴に関する本も出版されているが、人間ドラマがある裁判なんて1割に満たないのではないだろうか。裁判の9割はこんな感じで進んでいくのだろうなと現実を知った。どうやら傍聴マニアと呼ばれる方は殺人事件や有名人の裁判に参加するのが好きらしいが、その気持ちは少しだけ理解できる。関係者には申し訳ないが全くの第三者が誹謗中傷の裁判を聞いてもつまらない( ̄▽ ̄;)
いつどこで自分が被告になるかわからない。ある日いきなり自宅に訴状が届く可能性もある。そうしたときに動じずに適切に行動するためにも一度は民事裁判を傍聴したほうがいいと思いました。
今日の一言:素人の本人訴訟は絶対にやめましょう。