ラグビー日本代表は特殊だ。他の競技よりも外国人選手が多い。サッカーやオリンピック競技の日本代表は日本国籍であることが絶対だが、ラグビーの場合は「両親か祖父母のうち一人が日本出身」「日本で3年以上継続して居住」のいずれかの条件を満たしていれば日本代表に選ばれる資格を有する。つまり国籍よりも居住や血統を重視している。
そうした独自のルールもラグビーの面白みの一つであるが、日本人にとっては違和感があるだろう。日本代表の半数が外国人選手で埋められた時代もあり、最終登録メンバーが発表されると毎回マスコミに議論されてきた。2015年ラグビーW杯メンバーは31人中10人(※)が外国出身選手だったので、ある意味では予想通りだった。しかし、そんな議論をしているのは決まって素人であると断言できる。
※松島幸太朗は南アフリカで生まれたが、3歳から日本に移住しているのでカウントしていない。
ラグビーW杯2015最終登録メンバーの外国出身選手
マレ・サウ/タンガロア高校[NZ]
カーン・ヘスケス/オタゴ大学[NZ]
トンプソン・ルーク/リンカーン大学[NZ]
アイブス・ジャスティン/タイエリ高校[NZ]
マイケル・ブロードハースト/キヤンピオン高校[NZ]
クレイグ・ウィング/ニューサウスウェールズ大学[AUS]
リーチ マイケル/東海大学
ツイヘンドリック/帝京大学
ホラニ龍コリニアシ/埼玉工業大学
アマナキ・レレイ・マフィ/花園大学
日本国籍の選手:10名中6名(アイブス ジャスティン、マイケル・ブロードハースト、ツイヘンドリック、トンプソン ルーク、ホラニ龍コリニアシ、リーチ マイケル)
外国出身選手のカテゴリーでは本来は小野晃征も含まれるべきだが、名前が挙がらないのは素人だけが騒いでいることの象徴だと思う。
日の丸を背負う覚悟
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ホラニ龍コリニアシはトンガ出身で、埼玉工大深谷高(現・正智深谷高)でラグビーを始めた純粋なジャパンラグビー選手だ。祖国では吹奏楽部に所属し、トロンボーンを吹いていた異色の経歴。2007年に日本国籍取得。左腕に大和魂と書かれたタトゥーを彫っている。
トンプソンルークはニュージーランド出身で、2007年、2011年、2015年と3大会連続で選ばれたベテランロック選手。2015年の南アフリカ戦での献身的なタックルは記憶に新しい。同大会では五郎丸やリーチが注目されたが、目の肥えた往年のファンからはトンプソンルークのほうが評価が高い。
世界一フィジカルの強い相手南アフリカへの肉弾戦がロスタイムでの大逆転劇を演出したことを玄人好きなファンは知っている。4試合ともフル出場を果たし、獅子奮迅の活躍はのちにラグビー専門誌で「読者が選ぶMVP」に選ばれた。2004年の来日から10年以上たっており日本語もペラペラ。2010年に日本国籍取得。流暢な大阪弁を聞けば彼が外国人選手なんて議論は吹っ飛ぶ。
リーチマイケルはニュージーランド出身で、15歳のときに札幌山の手高校に留学生として入学し、東海大学に進学。留学生にはコミュニケーション問題があるが、高校から日本にいるリーチにはどこ吹く風だ。彼は日本人女性の妻をもらい、2013年に日本国籍取得。メンタルは日本人の彼に「外国人の主将はどうなのか」という疑問は失礼にあたる。
ツイヘンドリックはニュージーランド出身で、帝京大学に留学生として来日。帝京大学の中心選手として大学選手権初優勝に貢献した。2014年に日本国籍取得。
外国人選手と言われているが、実際には日本の高校出身が2名、日本の大学出身が4名もいる。彼らは出身こそ海外だが、日本で育ち、日本の文化を理解し、日本を愛している選手。トップリーグでは外国人枠の制限はあるものの、簡単に帰化するなんてできない。彼らは日本に骨を埋める覚悟で日本への帰化を選択した。彼らは桜のジャージが似合っている。